舞台裏

美乃梨:
 あのさ
ふゆざき:
 何?
美乃梨:
 前回、というか、前々回というか、UO・在日シャード間での食糧備蓄競争の終盤で言われたこと、覚えてる?
ふゆざき:
 「もうすこし、自信持っても良いと思う」、だったっけ。
美乃梨:
 その評価のきっかけになったのって、Izumoが最強の称号を奪われそうになって、どうしよう? ってなったときに、勧誘の文章を書いた*1からだったよね?
ふゆざき:
 あれは、単に事実をまとめただけだって。確かに、俺の気持ちも半分ぐらいは入ってたけど。
美乃梨:
 まとめるにしても、人の気持ちを動かすような文章かけるんだからさ、もうすこし自覚しなさいよ。
ふゆざき:
 でも、さ。素直に喜んで良いのかどうか判んないのよ……
 俺に出来ることなんだから、誰にでも出来るような気がするし。
美乃梨:(溜息)
 あのさ……
「自分に出来ることだから、誰にでもできる」なんて思わない方が良いことぐらい、判んない?
 行きすぎた謙遜は、卑屈と変わらないぐらい見苦しいもんなんだから、いい加減、胸張りなさいよ。
ふゆざき:
 ……
美乃梨:
 大学に入れたの、何でだった? ううん。何で、推薦入試受けさせて貰えたの?
ふゆざき:
 あんときは、進路指導の先生が、俺が文章書くことが得意だってことを知ってたから、出してくれたけど。
美乃梨:
 ほら、見なさいよ。
 でもね、ただ得意なだけだったら、ひであきくんの学内順位や授業態度を考えたら、受けさせてもらえなかった*2でしょうね。
ふゆざき:
 けどさ……その後で、必死になって書いた物語、「評価に値しない」って一刀両断されてたからさ。
美乃梨:
 別の考え方できない? もしも、相手がひであきくんに脅威を感じて、芽を摘んでおきたい、と思っての評価だったらどうするの? それじゃ、思うつぼじゃない。
 そうじゃないにしても、芽を強くするために、踏みに来てのことだったら、どうするの? そっちだったら、そう評価してくれた人に申し訳ないじゃない。
 それ以前に、ひであきくん、本人の口から、その言葉を聞いてないでしょ?
ふゆざき:
 ……
 わるい、目眩してきた……
 ちょっと横になってくる。
美乃梨:(退出するふゆざきを見送りながら)
 ……ちょっと言い過ぎた、かな?
 でもさ、ひであきくん。あなたは、自覚しなきゃいけないのよ。
 少なくとも、読み手の心に響く文章を書けることを。
 そんな文章を書ける人間は、ある程度自重しなきゃいけないことを。

 『今』のままじゃ居られなくなる時期が来たら、どうするの?
 変わり始めてるのかも知れないのに。

*1:公表はされてないが、言い出しっぺの法則で原文を書いた

*2:申し込んでみたモノの、学内選考の段階で蹴られるほど、成績が悪かった