前にさ、『sneg?』って奴書いたと思うけど、改めて、位置取りやら性向やらを沿った物に修正してみた。
ユリのフィギュアを前にして、不審な行動をしている弟に、クリスは呆れていた。簡単に言えば、本人でもないというのに、顔を真っ赤にして、スカートの中を覗こうとしたり、好奇心、というか、欲望というか、そんな気持ちが、罪悪感に負けたのか、頭を振ったりしている。 ――そんなに見たかったら、本人に言えばいいのに。 とクリスは思ってしまった。と同時に、苦闘とも言える交渉をまとめた甲斐があった、とも感じている。 ――って、言えてるなら、こんな態度取らないわね。ん〜と、進呈品は、ユリさんにモデルA、B、Cの三つ。ラスクには……BとCの二つで良い、かな。 職権濫用と言われるかも知れないが、クリス自身、このフィギュアの企画を提案したのは、ラスクへの援護射撃、という意味合いもあった。とはいうものの、マーケティングリサーチという性格も併せ持つ、第一陣で、その援護射撃という目的を達成させた時点で、彼女自身に、何処かで「商売として成り立つ」との目算が在ったのだろう。 そうでもなければ、ユリをモデルとしたフィギュアに三つのモデルを準備したりはしないだろう。 ユリと弟に渡す予定の品を、それぞれ別けて梱包していると、こちら(購買部)に向かって歩いてくるポニーテールの少女の姿が目に入った。先手必勝というわけでもないのだろうが、見つけた瞬間、クリスは声をかけていた。 「あ、ユリさん」 クリスの声に、ラスクがびくりと、身体を強張らせる。 「ラスク、見なかった?」 「ここにいますよ」 「なんで?」 「私が呼んだからです」 意外そうな表情を見せたユリに、営業スマイルでクリスが応える。 「って事は……」 「後は、ラスクとユリさんに渡せば、いつでも売り出し始めることができますよ」 「見せて、見せて」 「ぼ、ぼくは、な、何も見てないから」 購買部から逃げ出そうとするラスクとすれ違い様、ユリが逃がすまいと捕まえる。 「み……な…、…たいっ…い…ばいい……」 何事か囁かれたのだろう。耳まで真っ赤にして、ぎこちない動きで、ラスクは部屋を後にしていた。 「あんまりいじめないでくださいね」 「いじめてなんてないわよ。あんまりかわいい反応するから、からかってるだけ」 そう言うのを「いじめている」と思ったクリスだったが、口には出さないことにした。何を言っても、無駄な気がしたからだ。 「でも、どうして、そんなこと気にするの?」 彼女の注意が気になったのか、ユリが直球で質問を投げかける。が、それをはぐらかすように、クリスは前もって準備していた包みを取り出した。 「これが、ユリさんの分です」 「あれは?」 と、所在なさげに佇んでいるフィギュアを示してユリが尋ねた。 「それは、ラスクの忘れ物ですね。ついでに、お願いしてもいいですか?」 「まぁ、どうせバレンタインデーだから、構わないけど……?」 包みの中身を確認していたユリの言葉が止まった。 「なんで、同じのが二つ入ってるの?」 「その中身、それぞれ少しずつ違ってますよ」 「ほへ?」という表情で応えたユリに、クリスが答えを言い放つ。 「違いを確かめようとするのは構いませんけど、ラスクと二人きりか、人目に付かないところ、のほうが良いですよ?」 「なんで?」 「ラスク以外に見られても良いのなら、私は止めませんけど」 その一言で全てを理解したのだろう。真っ赤になってユリがクリスに詰め寄る。 「どういう事?」 「ユリさんへの謝礼と、ラスクのため、では回答になりませんか?」 「ならない!」 「さすがに、シャロンお嬢様のは、水着にするわけにはいきませんけど、ユリさんのフィギュアの量産モデルは、水着にしてありますよ?」 「そういう問題じゃなくて、どうして、あなたがラスクのために、そんなことをするのか? って聴いてるの」 返答次第ではぶっとばす、と言いたげな物騒なオーラをまとってユリが、更に詰め寄る。クリスにしてみれば、やましくもない腹を探られるのは気分の良いものでもないが、かといって、隠す必要のない事実でもある。 「たった一人の弟のため、じゃダメですか?」 「へ?」 ごまかそうとも、隠そうともしない、直球なクリスの返答に、ユリは虚をつかれる格好になった。 「もう一回、言ってくれる?」 「ですから、ラスクが私の弟だから」 「それって職権濫用って言わない?」 ユリの言葉を聞き入れたからなのか、クリスは、人差し指をあごにあてがうと悩む素振りを見せた。 「商業的な成功を収めることが出来なかったら、そう言われるでしょうね」 「へ、へぇ……職権濫用って言われない自信があるんだ」 「はい」 屈託のない笑顔で、クリスは、引きつったユリの質問に答えた。 「どうして、今回のメンバーが、この三人だと思っているんですか?」 そこから、更に続くだろう彼女の言葉に、ユリは耳を塞ぎたくなった。 ――聞きたくない、聴きたくない。 そんなユリの心情を酌み取ったからなのか、クリスが話題を切り替えた。 「あ、そうだ。ユリさん。本命用の準備は、お済みですか?」 クリスの囁きが、ユリには、悪魔の囁きのように聞こえた。
……それなんて悪女? な雰囲気が漂っている気がしなくもないですが、おそらくは気のせいでしょう(笑)。
クリスがいろいろ動いてるのは、前からのことだし。
でも、なんて言うのか……方向性が全然違う話を書きまくってる気がしなくもない。進めなきゃならない本編を進めずにさ(汗)。