#01・『ラスク・Pre-Expert』#1

今の状態じゃ、完成が何時になるのか判んないから、可能な限り小出しにしてみる。まぁ、卑怯な方法では有るんだけどね。

ラスク・Pre-Expert#1

「えーっと、ラスクくんに限った事じゃないけど、中級魔術士以上の皆さんは、トーナメントランクも、昇格認定に関ってくるから、標準ランクを維持するように心がけてね。油断した挙げ句に、ランク落っこちて昇格認定貰えなくても、知らないんだから」
 アメリアの報せを聞いて、皆の表情に緊張が走る。彼らの通常称号には、六種類有り、下位から、修練生、初級・中級・上級魔術士、大魔導士、そして、最上位に賢者と別れている。この中でも、賢者以外の五種類には、更に十級から一級までの階級が存在する。
 ラスクに限らず、中級魔術士以上の称号を受けている者の中でも、階級が一級に到達している者たちの意識には昇級検定の影がちらつき始める。これは、上位階級に相応しい実力を修めたか否かをチェックするものだが、何も特別に受けるモノではない。
 トーナメントの結果に応じて割り振られるランク、トーナメントランクと呼ばれているのだが、それが、上級への昇格ならエルフ以上に、大魔導士への昇格ならユニコーン以上に、そして、彼らの目標とも言える賢者認定を受けるためには、ペガサス以上で有ることが要求されている。これをクリアできなければ、より上位の階級称号の認定を受けることができないのだ。
 ラスクの現在のトーナメントランクは「エルフ」となっているので、今の調子を維持することができれば、すんなり、上級に昇格することができる。経験者とも言えるユリにしてみれば、あまり気分の良いものでもないが、自分の選んだ少年が、そう簡単に足止めを喰らうとは思ってはいない。遅かれ早かれ、自分と同じ上級魔術士に到達することだろう。
「それじゃ、今日のHRは、これにて終了。今日も一日、適当に頑張りましょう」
 およそ教師らしくない言葉で締めくくると、アメリアは意気揚々と教室を後にしていた。

「ラスク、ラスク」
 アメリアが退出すると、教室の緊張感は一気に消え去った。今日は、どの講義を受けてから、トーナメントに参加するか、や、個人授業を受けに行くだのと言った、喧噪が包み始める。
 そんな中をユリは、真っ先にラスクのところに向かっていた。
「今夜、行ったげよっか?」
「ごめん。上級に上がる翌日までは、開けておきたいんだ」
「えー?」
「私に付き合っていただけます?」
 不満そうな声を上げたユリに、シャロンが言葉をかけた。その様子を見たからなのか、安堵の表情をラスクが浮かべる。
「ラスクは、私のものって皆知ってるじゃない」
 シャロンが誘おうとしているのが自分だと言うことに気付いてないのか、ユリがむくれて答えた。
「ラスクなわけがないでしょう?」
「え?」
 予想外(?)なシャロンの言葉と、きょとんとしたユリの態度に、面白そうな匂いをかぎ取ったのか、ルキアが飛び込んでくる。
「何々、何事ー? シャロンがユリ誘うって雨でも降るんじゃない?」
「わ、私が誰を誘おうと、ルキアさんには無関係でしょ!?」
 とシャロンルキアに抗議するが、当のルキアの方は、そのような抗議は何処吹く風。新しい玩具や仲間を見かけた子犬のような勢いで、盛り上がり始めている。
「ならさ、ならさ。皆で集まっちゃおうよ。いい機会じゃん。私も、ユリに聞きたいこと有るし」
 首を突っ込んできたルキアの様子を見ていると、突っ込まれた側のシャロンやユリにしてみれば、「聴きたいことがある」や「良い機会」と言うのが後付けの理由にしか聞こえない。
「アロエちゃんは、当然参加で、クララやマラリヤも引っ張り出した方が良いよね。ヤンヤンは……」
 本人の希望も確認せずに、勝手に参加者をリストアップし始めたルキアの様子に、あっけにとられたラスクが思ったままを口にする。
「この調子だと、全員参加……になりそうだね」
 いつの間にか、主役を取られる格好になったユリとシャロンだったが、ラスクの言葉を否定する要素が見あたらないことに気がついた。
 結果的には、強制的な集合になるような気はするが、ルキアが中心にいると、それでも良いような気がしてしまうのだ。ユリには、それがルキアという存在に感じられ、シャロンには、そんなルキアの快活さが羨ましく思えた。
「そうと決まれば、場所の手配もしなきゃね〜」
 ユリから話を聞き出そう、と言う目的が、皆で集まってわいわい騒ぐことにすり替わっているように見えるルキアを見送りながら、ラスクは、『説明』する必要が無くなったことに安堵していた。

To be continued... -> 『ラスク・Pre-Expert #2』

ちなみに、これで原稿用紙6枚分相当。
これぐらいの量が、幾つで全体を形成することになるのやら……⊂⌒~⊃。Д。)⊃

でも、この線で行くと……旧作の中には、弄らなきゃならない作品も出てくるかな?
無いとは思うんだけど……元々、この方向性のつもりだったし。
はてさて、こいつはちょいと真面目に書いてみましたよ。ちょっとした分量の話になることは確定ずみです。orz
取り敢えず、この話の主線は、「『精神的な成長』と『泣きじゃくる誰か』と『お姫様だっこ』」となっております。
どんな方向性で流れていくのやら。先が思いやられますね?(苦笑)