#44・『Appendix PostScript』#2

ま、パートタイトルが、『Appendix Postscript』になった時点で、「ようやく、終わるな」と思った人も多いとは思うけどね。


さてと、本文を始める前に、いつものようにコピペでお茶濁し。
えーっと、物語の始まりは、9/18。おさらい程度のまとめは、00/2/3。
魔導昇格話。最後の本文です。

Appendix PostScript #2

<-『Appendix Postscript #1』

「魔導士に相応しい、のかな」
 唐突なラスクの言葉に、タイガも二人の様子をみての言葉を返すのが精一杯だった。
「どうなんやろな? 踏みとどまれず、勝ちきれん自分に悩む。やから、お前さんは、『大魔導士』って言葉を嫌っとるんやんな?」
 タイガの言葉にあった、『大魔導士』と言う言葉に反応したラスクだったが、それが確認のための言葉だったことに気がつくと、表情を緩めた。
「うん……」
 と短く同意すると、
「『大魔導士』を名乗って良いのは、ケルベロスランクに留まれるか、覗いたことのある人だけだよ」
 と心情を吐き出した。
「なら、それでええんとちゃうか? お前さんは使わなんだらええ。俺らも、お前さんの前では、使わん」
 タイガとしては、別段誰かに強要するでもないラスクの態度には、受け入れる他無かった。のだが、彼自身の中でひとつの答えとして現れた考え方は、伝えるべきだと感じていた。
「けどな、ラスク。俺は、このままエルフに沈まずに、スルーするように検定もクリアできたんなら、大魔導士の端くれぐらいにはなれてると思うぞ?」
「そうかな……」
 タイガは、そんなラスクの様子から、彼にとって、『大』と言う文字の付く『大魔導士』と言う称号が、相当に重いものだと気付かされた。
――難儀なやっちゃな……


「お? 戻ってきたな」
 二人の座っている場所を素早く見つけたのか、かけよってくるユリの姿に気がついたタイガがラスクに教えるようにつぶやいた。
 タイガの言葉に促されるようにラスクも、ユリが来るだろう方向に向き直る。と、そこには、満面の笑みを浮かべた彼女の姿があった。
「お待たせ、ラスク」
「お待たせって?」
「この前、約束したじゃない。私が、ゴールド相当のドラゴンメダルを手に入れたら、ラスクに渡したブロンズ相当のドラゴンメダルと交換するって」
 救護室での約束を思い出せと、言いたげにユリがラスクの質問に答える。
「あれなら」「気にしないの!」
 ブロンズ相当のメダルでも良いと、言いたげなラスクの言葉を遮って、ユリがメダルを手渡す。
「ラスクの部屋に押しかけて、回収するからね」
 今夜は泊まるから、と言いたげな勢いでラスクに迫るユリに、タイガが声をかけた。
「あのー、ユリさん?」
「なに?」
「もう少し、廻りの状況とか考えへん? ここで、そんな大胆なこと言うのは、どうかと思うんやけど?」
 たしなめようとするタイガとユリのやりとりを聞きながら、ラスクは、昇格した翌日。カイルから聞かされていた話を思い出していた。


「倒れるぐらいまで連続でトーナメントに参加するって言うのは、アメリア先生やミランダ先生に心配をかける行いなんですから慎むこと。別に、昇格検定は逃げたりしないんですし、一時の無理が元で、身体を壊したりしたら、元も子もないんですから」
 言い聞かせるようにラスクに告げると、冷たく鋭い眼光で射すくめるように二人を見つめ、
「それに、これからラスク君が望むペガサスランクでの戦いというのは、参加回数だけでも、少なくても二倍。下手をすれば、桁が一つ違う相手との戦いになるんです。その事だけは、忘れないようにしてくださいね」
「そうなんだ……」
 眼鏡を直しながら、カイルがラスクの言葉に応える。
「僕から言えるのはこれぐらいですから。あ、あと、それから」
 踵を返そうとしたカイルだったが、何かを思い出したのか、彼の足が止まった。
「待ってますからね。フェスタに、キングリーグで参加してくる日を」
 それで自分の言いたいことは全て伝えた、と言わんばかりに踵を返し、気圧されして身じろぎ一つできない二人を置いて、教室に戻っていった。

 二人は、この時。『賢者』と言う称号を持つ者が具える『何か』を垣間見たような気がした。
「賢者って、やっぱり凄いんだね」
 去っていったカイルの背中を見送るように、ユリとラスクはそうつぶやくのが、精一杯だった。

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ダベリ

時計を進めて、また巻き戻して、って時間の流れになった、このAppendix Postscriptを持って、『最後の境界を目指して』は終了にございます。

取り敢えず……
9/18からお付き合いいただいた皆様方。おつかれさまでした。
劇中のラスクとユリも、ようやく魔導士昇格にございます。でもさ。なんというか、中だるみの魔導士昇格って感じになったような気もしなくもない今日この頃だったり。
中だるみで、44話かよ、って言われると返す言葉もない次第ではありますが。
まぁ、そんなこんなで、ようやく着陸でござります。っと。
けど、カイルを介入させたのは、どうだったんかなぁ? って気がしてきたよ?
取り敢えず、この時点でのアメリア組の賢者はカイルだけ。で、その次に賢者になるのは……果たして誰なんですかね?

さてと。これで、心おきなく、ユリラスの賢者昇格にとっかかれるわけだけど、今週いっぱいは、おやすみさせてくださーい。ってな。
これを書いている間に、細々と思ったことは、またあとで。

んでは、四つ目のカテゴリー『啓と標』にて、逢える日を。
ユリラスという、どマイナーなカップリングの人、冬崎秀明でした。