ゼオンとガッシュと、クリア・ノートと……

さてさて、終章とも言える現状で、うえきと同じような印象を持たせておきながら、実は「最悪の椅子取りゲーム」だったことが明かされた『金色のガッシュ』。
「魔導巨兵ファウード」編で、解消・昇華されたガッシュゼオンの積年の因縁と、『The LAST10・在ろうとする意志、滅ぼうとする意志(私題)』で登場したクリアノートの存在と、から、ふと考えてしまった一つの事柄について。

なお、コレは、一読者が、作者が提示した断片を元に、『ガッシュも選ばれた理由・クリアが選ばれた理由』に関する考察として、私的に再構築したものであることを断っておきます。

ゼオンガッシュについて。

作中でも、語られていたことだけど、確か、この二人は、双子として産まれ、王は、ゼオンを王子として受け入れ、ガッシュにはバオウを引き継がせたが、手元には置かなかった。
このことは、ゼオンガッシュに対する敵愾心の引き金になったんだけど、この王の判断は、ガッシュに引き継がせたバオウの力が悪用されることを恐れたが故、とされている。
後に、ガッシュは、バオウに飲まれることなく、その力を自身が目指す、「優しい王」になるための糧とすることに成功する……んだけど、ここで重要なのは、どうして、ガッシュが候補に選ばれたのか、ってこと。
ゼオンが選ばれたのは、仮定でしかないんだけど、ガッシュが選ばれたこと、そして、クリアが選ばれたことにも関係しているような気がしているんだ。
そう考えると、どうして、ゼオンには、厳しい修練の日々が待っていたのか、ってことも納得できるような気がしてさ。

なぜに、ガッシュは選ばれたか?

生き残った魔王候補が、十体になったところで、彼らに突きつけられた魔界の現状。
それは、あらゆる住人たちが魂のみの存在とされてしまい、目には無人の、耳には静寂の世界が拡がっているだけ、と言う状況だった。
それ故に、魔王となった者には、最初に、選別を行うことが要求される。肉体を与える住人と、そうではない住人とに。ここに、ゼオンが候補に選ばれた意味が関っているような気がするのだ。
それは、バオウの力を捨てるだけではなく、永久的な封印を目的とした、つまり、ガッシュの消滅を目的とした選択ではないのか、と言うこと。
それを匂わせるように、ゼオンは、ガッシュの存在を知っているが、ガッシュは、ゼオンの存在を知らなかったことも関係しているように思える。実際、ゼオンは課せられた非情とも言える鍛錬が、それとは無縁に暮らすガッシュへの羨望と逆恨みに近い感情を呼び起こすことになったわけだ。実際、ゼオンは、まっ先に、ガッシュを見つけ出して、その記憶を奪っているわけだし。

危険思想の持ち主・クリアが選ばれた理由は?

コレは、もういうまでもなく……予防策だろう。
予防策、と言うよりも、確実性を、と言うべきか。
ガッシュに授けたバオウの力が覚醒するまでに、クリアによって、または、それ以外の候補の手によって、ガッシュが排除されれば、バオウの力の封印、と言うのは、俄然現実味を増してくるのだ。それならば、ゼオンに、あのような厳しい修練を課す必要はない、と考える向きもあるかも知れないが、クリアが排除されずに、LAST10に残る可能性を警戒するならば、必然と考える方が自然だろう。

ここで言えることは、ガッシュは、そうそうに争奪戦から脱落し、消滅を待つ立場になることを期待されていた、と見なすことができる。それはそれで、あまりにヒドイ話ではないのか? と言われそうではあるが、執政者の立場であるならば、ガッシュに引き継がせたバオウの力の恐ろしさを考えれば、こう考えることも可能になる、という一例になる。