『越境〜光もたらすものと標星〜』#61

さてと。爆弾発言を受けてのBパート。

report from LASK and YURI to sky...#4

<- 『report from LASK and YURI to sky...#3』

 問いかけた相手が、自分の問いに答えることがないことぐらい、ユリだって承知している。だから、これは、願い出る、と言うよりも、報告との性格が強い言葉だ。

 ユリの胸に抱かれる格好になっていたラスクが、目を見開いて、碑を見つめる彼女の顔を、見上げている。
「なに? どういうこと?」
 つぶやくように、ラスクがユリに問いかける。が、ラスクの呟きは、風にかき消されたのか、彼女の耳に届いていないようだった。
「……なんて、先輩たちに訊ねても意味、無いですよね」
 と、寂しそうに、ユリがつぶやいた。

 平静を取り戻したのか、ラスクが、さっきよりは、大きな声で、ユリに問いかける。
「どういうことか、判ってるの?」
「判ってる」
 ユリの方も、その意図を理解したように、答えている。彼女の言葉に、どう答えればいいのか、悩んでいたラスクだったが、それよりも早く、ユリの方が、言葉を繋げていた。
「ユリ=エンライトンなんて言わない。ユリ=ポーラスター・エンライトンにしたいだけなんだから」
「どうして?」
「アメリア先生は、返上するのは許さない、って」
 と、あっさり言葉を返されたが、今の時点で、彼女の中で、自分がそう言う存在になっている事を理解して、ラスクが、聞き返す。
「ぼくで良いの?」
「私じゃ不満?」
 反問に反問で答えられ、ラスクは真っ赤になりながら、俯き加減で首を横に振る。
「なら、それで良いじゃない」
 ラスクの返事に、ユリは優しい声で答えていた。

「また、何時か来ます」
 と別れの言葉をラスクが碑に向かって投げかける。
「今度は、私の名前が変わった、って報告かもしれません」
「気が早いってば」
 自分の言葉に続いたユリの言葉に、ラスクも、呆れたようにつぶやいていた。


「報告は、済んだんか?」
 教室に顔を出した二人に、真っ先に気付いたのか、タイガが教室の誰よりも早く、問いかける。と、それが合図になったのか、教室で思い思いに過ごしている面々の視線が、二人に注がれる。
「う、うん」
 恥ずかしそうに応えるラスクの様子を見て、ルキアが真っ先に飛び込んでくる。
「ちょっと、何それ、ラスク。どう見ても、着られてるじゃない」
 とひとしきり笑い終えると、誰かを捜しているかのように辺りを見渡し始めた。そんなルキアの様子には気にも止めずに、アロエが、賢者服姿のラスクに、羨望のまなざしを送っている。
「いいなぁ」
「大丈夫、大丈夫。アロエちゃんもトーナメントで頑張れば、そのうち着られるようになるわよ」
 と励ますように、ルキアアロエに言葉をかける。
「御祝儀、出ないアルか?」
 とは、ヤンヤンの弁だがラスクには、苦笑いを浮かべることぐらいしかできなかった。

To be continued... -> 『report from LASK and YURI to sky...#5』

ダベリ

正直言うと、Bパートでは、もう少しルキアに冷やかさせても良かったかなぁ、と、軽く後悔。とは言うものの、あんまりやりすぎると、ルキア使いの人達に白眼視されそうなんで、控えめに。
だってさ、そうでなくても、ユリラス使いから白眼視されてそうじゃん?
だからね。
それでは、最後のCパートに。