毎度のように、こっちはBパートです。Aパートは、この↓。
Across the BORDER.afterward.#6
<- 『Across the BORDER.afterward.#5』 下弦の月に照らされる部屋の中で、ユリは、ラスクに訊ねていなかった事が一つ有ったことに思い至っていた。 「ラスク……」 「なに?」 静かなユリの問いかけに、ラスクも何事かと聞き返す。 「賢者になったよね? まだ、前に進むつもり、有るの?」 トーナメントに参加する事自体が、負担になっているのなら、別に止めても構わない、とユリは思っていた。いや、ユリには、ラスクのトーナメントへの参加の仕方が、以前のようなのびのびとした様子よりも、何かを打ち砕こうとする負の意識が、何処かで宿っているように映っていたせいで、できれば、止めさせたかった、と言うのがあった。 「有るよ。まだ……叶えてない『願い』があるもの」 「『願い』?」 「一つは、ケルベロスに行くこと。もう一つは……怒らないでね?」 「どうして?」 「……ユリじゃないんだ。もう一つの『願い』に関ってるの」 と、申し訳なさそうに応えるラスクの様子に、ユリも、敢えて問いかける。 「どういう事?」 「たった一回で、いいから……同じ舞台に臨みたい人が二人、居るんだ」 とのラスクの返事を聞いて、ユリは少しだけ、気持ちが楽になった。それは、負の、ネガティブなものではなく、ポジティブな願いに聞こえたからだ。 「一人は、ルビー・カテゴリー1のことに、物凄く詳しい人で、ルキアさんみたいな人だと思うんだ」 「子犬みたいに首を突っ込んでくるって事?」 とユリが冗談めかして聞き返すと、ラスクは、首を振って応える。 「違う。太陽みたいな、感じ」 「ルキアって、そんなところ有るよね。で、もう一人は?」 「ルビー・カテゴリー2の撃破率が九割を超えたことがあった、って聞いたことがある人で、ユリにそっくりなんだって」 「私じゃ、役不足?」 と不服そうにユリが聞き返すと、ラスクも慌てたように否定の言葉を並べる。 「そう言う訳じゃないよ。そう言う訳じゃないけど、」 「ごめんごめん。ラスクがそんなつもりで言ったんじゃないことぐらい、判ってる」 「本当に?」とのラスクの反問に、ユリも「本当」と応える。それで安心したのか、ラスクも話題を戻していた。 「でね、その二人と、ケルベロスランクのコロセウムに立ってみたいんだ」 「そっか…… ラスクは、戦いたい相手が居るんだ」 「うん…… 気持ちが落ち着かないのなら、『この人と同じ場所に立ってみたい』と思える相手を探せばいいってミランダ先生が話してくれたんだ」 と、ミランダの名前が登場したことで、ラスクの心に落ちた影の根深さを思い知らされた。 ――まだ、あの一件は、完全に整理できてる訳じゃないんだね…… 「それじゃ、私も、それ、目標にして良い?」 とのユリの言葉に、ラスクも、 「断らなくても良いのに」 と応える。ユリとしては、それでも満足だったのだが、こうすることが肝要だろう、と思った言葉を口にする。 「競争しよっか? どっちが先に、二人とコロセウムで戦うことが出来るのかって」 「……でも、勝ち負けはどうするの?」 「決めなくても良いじゃない。その前に、さ。私たちにはしなきゃ、できなきゃいけないこともあるんだし」 「……そうだね」 自分の大魔導士時代の戦績を思い出したからなのか、ラスクも、一呼吸おいて、ユリの言葉に応えていた。 「ケルベロスに留まれなきゃ、いけないんだよね」 決意するように、つぶやいたラスクを、ユリはそっと抱きしめた。 To be continued... -> 『report from LASK and YURI to sky...#1&#2』
ダベリ
えーっと、全部読んだ人に。
誰のことかわかっても、ニヤニヤするだけに止めましょう。(本人への)通報は絶対禁止。
で、まぁ……このラスクの願望が果たされたかっていえば……
そんなわけねーじゃん。orz
自分で言ってても、悲しすぎる断言だ。
そりゃね。回数少ないし、時間帯が完全に噛み合ってない以上、可能性がゼロに近いわけですよ。そこへ持ってきて、ケル滞在は、数戦ですよ?
ますますゼロに近づいてく、っちゅうねん。⊂⌒~⊃。Д。)⊃
ま、そんなこんなで、昇格当日は、これにて終了。
明日からは、八週間続いたこの物語の、最後のパートに入ります。では。