『越境〜光もたらすものと標星〜』#29

さてと……お待たせしましたな。更新かけますよ。
って、ストックがいよいよ減ってきてるから、なんとかしないとマズいなぁ。


スタートは、06/12/04。おさらいは、いつも、と言うか、毎度のように00年2月4日に。
年越しまたぐ、セクションになってしまいましたな。作中では、『その境界線』をまたいでないのに。このセクションの頭は、06/12/30から。
ところで、第1話へのリンクって……必要?

では、本文。

The BORDER of close at hand.#3

<- 『The BORDER of close at hand.#2』

「まぁね。修練で到達するには、どれほどの回数を参加しなきゃいけないのか、考えるだけで気が遠くなる高みなもんだから、贈り名みたいな称号だしね」
「そう考えると、レオンさんのお父様って相当な方なんですね」
「そうね……」
 と、クリスの言葉に、噛みしめるように応えると、購買室に沈黙が訪れる。


「ところで、ユリさんの名前、もう決めたんですか?」
 沈黙を破るように、クリスが問いかける。いずれ封じられる形になるとは言え、彼女には受け継ぐ名前がある以上、ユリがいずれ名乗るようになる名前を知る必要はないのだが。
「やっぱり、気になる?」
「気が早いかも知れませんけど、妹になるかも知れない人ですからね」
「……本当に、随分気の早い話ね」
 と、クリスの言葉に呆れはしたものの、アメリアも、少しだけ気を良くして、口にする。
「ラスク君とのこともあってね、ラスク君の道標になってあげて欲しいから、私の『ポラリス』をもじって、『ポーラスター』にしようと思ってるの」
「ポーラスター、ですか」
 と、アメリアの口から出た言葉を、クリスも反芻した後、いずれ名乗ることになるだろう、その名を改めて口にしてみる。
「ユリ=ポーラスター…… いい名前ですね」
 響きが気に入ったのか、クリスの表情がほころぶ。
「でしょ? でしょ?」
 クリスの反応が、嬉しかったのか、今にも、彼女の手を取って、むやみに大きく降り出しそうな勢いだ。
「ラスク君もさ、ユリちゃんがいたからこそ、あそこまで立ち直れたと思うんだ。そういう意味では、彼女に、ぴったりの名前だと思わない?」
「え、ええ」
 自画自賛のような勢いのアメリアに圧倒されてしまい、似合っているかどうか、と言うところまで考える余裕が無くなってしまっていた。
「でね、私としても、はやく授けてあげたいんだけど……」
「検定、ですか?」
 クリスの問いかけに、アメリアは、首を振って応える。
「ううん。そっちよりも、参加回数のほうかな……」

「繰り返しになっちゃうけど、二人とも、帳尻併せるのが巧いから、心配ないんだろうけど」
「二人には、二人のペースがあるんですよ」
「そうは言うけど、そうでなくても、私のクラスには、タイガ君って問題児もいるから」
「問題児、ですか?」
 採寸の時に、付き添いとしてここを訪れたタイガの様子とは、まったく違う印象のアメリアの言葉に、クリスは、聞き返してしまう。
「だって、この時期になっても、まだ初級魔術士なのよ? フェスタも、未だポーン。これじゃまるで、私がサボるのを認めてるみたいでさ……」
「そういう意味での問題児ですか」
 納得したとのクリスの言葉に、アメリアは溜息混じりに頷くと、ぼやきが漏れた。
「フェアリーなんて、最初の一回っきり。エルフに出られるだけの実力もあるって言うのに……」

To be continued... -> 『The BORDER of close at hand.#4』 

ダベリ

本文を読めば判るように、お年玉代わりに、いっちょネタバレかましましたよ?
……って、作中に登場するのは、ネタバレになんのか? ま、いいや。考えんの止め。

えーっと、これで、この話のサブタイトルの「標星」の意味も判ったかと。って、或る程度、予想付いてると思うけどね。ラスクには、エンライトン(Enlighten)、つまり、「啓蒙するもの」との名を与え、それに対するように、「標星」との名を与えたのも伊達じゃないんだからさ。
さて、今日のところは、ここまで。続きは、また明日。
……一応、新年の挨拶とかしてみたけど、この話を追いかけている人にとっては、これが片付くまでは、年明けてないかもしんないね(汗)。