リザレクション……

まだ、その心境には早いみたいだけど……どっかでケリ着けないとね……
これの公開は、あたしの独断で。

リザレクション・Mind not depressed.

 ……圧倒的だった。肩書きが一つ違う、その差は。
 八割取れてないの、僕だけ。後は、みんな八割……

 たたえ合う、みんなを見てると……僕が、ここにいるのは場違いにすら思える。

 五位との差でも、六点差……一つ平均一点……

 誰も、その事に触れない……触れてくれれば、笑い話の一つにでもできるのに、触れてくれないことの方が、尚辛い。
 正直、何もかも、消えて無くなってしまえばいいと……本気で思った。
 ふと、頭をよぎる、ハクタクと呼ばれる存在のこと。……なくしてくれれば、良いのに。今夜のこと、それ自体を。「今夜を無かったことにしてやる」とか言って……

 何か……言ってる……よくわかんない、けど、その言葉が、胸に刺さる……
 僕が居なかったら、もっとだんごになってたよね……
 何も、言いたくなかった。何か言ったら、全部壊してしまいそうで。


 僕は、逃げるように、会場を後にした。


「どうだった、どうだった?」
「お前も、もう少し空気読んだれや。うちひしがれとるやないか」
「百点満点中七十八点……」
「上出来じゃない。七十四〜五でしょ? 普段の撃破率」
 ユリの言葉に、僕は頭を振った。そんなに高くない。ユリと、同じぐらい……の七十一〜二。
「え? もっと高かった?」
 僕は、頭を振って答えた。
「多分、ユリと同じぐらい……」
「だったら、尚上出来じゃない」
「階級に押しつぶされたか」
 タイガさんの言葉に、頷くしかできなかった。後半は、置いていかれるのが恐くて、思い浮かべた絵を信じることさえ、できなくなってた……
「そんな言い方しなくても良いじゃない」
「どんな結果になったんか、それは、俺らには判らへん。発表見るしかないからな。けど、お前の様子を見ると、まわりの連中、結果をみんと、安心できへんかったんちゃうか?」
 ……慰められてる、のかな。
「期待値考えても見い。セットで五十点台やと、出来が悪い、って感じるのがお前らやろ?」
「まぁ、ね」
 と、ユリは言うけど……僕としては、六十点台でも出来が悪いと思ってしまう……六十点割ったら……セットトップ取れてても……嬉しくない。
「でも、賢者の人達って……」
「あほかぃ!」
 どなられた……
「ええか、ラスク。お前がトーナメントに参加しとる回数と、賢者の連中がトーナメントをこなした回数。単純に比較しても、四倍〜五倍違うんやぞ? そうでなくても、お前はユリと違うて、ホビット落ちを経験せずに、上級に上がった。そうやな?」
 先生に、そんなこと言われた気がする。
「うん」
「先生言うとったな? 昇格認定降りひんこともあるって? それが何を意味するか判らへんのか? そんなこと言われんでも、判るやろ?」
 ……それが普通なんじゃないの? 昇格権利、持ったままここまで来て、一気に抜けるのが普通なんじゃないの?
「タイガ、それぐらいで」
「いいや、辞めれへん。ここで言っとかんと、おそらく再起不能になる。やから、言うんや」
 見下ろすように言っていたタイガさんが、肩に両手を置いて話しかけてきた。
「下手したら、いや、下手せんでも、ラスク。お前が、一番回数少ないんとちゃうか?」
 言い返せないや……
「言い方変えたろ。お前を凹ませることのできる相手は、それだけ強ないといかんのや。苦労して、積み上げないかんのや。やとしたら、お前を、讃える事自体、……讃える側にしたら、かなり、キツないか?」
 そう……なのかな。
「タイガの言う通りかもね」
 え?
「みんながさ、ラスクに追われる立場だったと、考えてみたら? 確かに、一歩間違えれば、置いていかれるだけだろうけど……ピッタリ後ろに張り付かれる側にしたら、たまったものじゃないんじゃない?」
「お前が、潰しに来た、と感じたんやったら、考え方変えろ。お前が、それだけ、連中の余裕を奪ったんや」
「でも、さ……」
「それ以上言うな。思いたい奴には思わせとけ。ただ、お前は、追いつききれんかっただけや。やから、中途半端な離され方になったんや」
 って言うけど……今でも耳に残る、あの言葉……九点差は、最終的に十一点差に拡がった……けど、……平均で言えば、追いついた、うちにはいるのかな。
「今すぐ立て、とは言わん。でも、お前が、立ち上がれるまで、俺らは、傍に居ったる。でもな、手は貸さへんぞ? お前が自分の足で立ち上がらな、意味ないからな」
 それも、そっ……うわ?!
「じゃ、帰ろっか」
「ユリ、お前、それすんの好きやな……」
「良いじゃない。別に。ねぇ?」
 ねぇ、ってところに、「こうされるのは嫌い?」って聞かれてる気がする……
「そ、その……どこ見て良いのか……困るんだけど」
「何度もして上げてるって言うのに、その度にラスクってば、困ってるんだよ」
「……お前、それ、自分の体形考えて言え。手のやり場にも困ってるやないか」
 そうなんだ……この両手……どうしたらいいのか、よく判んなくて。
「なに? もしかして、私の胸に当たるのが恥ずかしいの? 胸同士なら、良く合わせてるのに」
 ……何か企んでる? もしかして。
「お前……自分の言うてること、もう少し考えたりいや。ラスク、真っ赤になっとるやないか」
 べ、べつに裸だからってわけじゃないから! ちゃ、ちゃんと服着てるもの。って、タイガさんに言おうと思ったら、ユリが耳元で、
「今夜は、しがみついて泣いてもいいよ」
 って。
 ……ありがと。


「しっかし……お前ら見とると、どっちが王子様で、どっちがお姫様なんか、判らんようなるわ」
「なんでさ?」
「普通、お姫様役が、そうされるから、『お姫様だっこ』言うんやろ、それ。お前らじゃ、『王子様だっこ』やないか」
「それいいね」
「認めんな、ぼけ」

珍しく、一人称です。タイガさんの株がまた上がるかも知れません。でも……こう綴らないと、あまりに救いがなかったんです。この断片は。
あの結果で、白熱と評されると、ひであきくんには立つ瀬がありません。それだけは、忘れないでください。