#05・『ラスク・Pre-Expert』#5

ってワケで、連作の方は、ここで一段落。
やっと、1時間強経過したところだよ……⊂⌒~⊃。Д。)⊃

ラスク・Pre-Expert #5

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『ラスク・Pre-Expert #1』

<- 『ラスク・Pre-Expert #4』

 難攻不落の要塞の様相で、ルキアの誘いに抵抗していたヤンヤンだったが、押しては引き、引いては押す誘いの波状攻撃に、とうとう音を上げてしまい、ラスクが言ったように、全員参加、と言う形に落ち着いた。
 参加人数が決まれば、次は会場の手配と、傍目に見ても浮かれていることが見てとれるルキアが、担任であり、寮監でもあるアメリアのところに、向かってから程なくした頃。
 ラスクが、教室に戻ってきた。

 教室に戻ってきたところで、声をかけようと思っていたタイガだったが、落ち込んでいる様子のラスクを見ると、そうすることがはばかれるように思えた。
――自分で戻ってきたって事は、そのうち立ち直れるやろ。
 精神的にも、体力的にも、勝負を続けるべきかどうかの判断を自分で下せている以上、例えそれが必要最小限であったとしても、余裕があると言うことだろう。
「しかし、フェスタの迫ったこの時期に、昇格目前とは大事やな」
 と、ぼやくと同時に、乱暴に机を叩く音と悲鳴にも近い、ラスクの罵声が教室に響き渡る。
 
 ぎょっとした表情で、ユウとレオンがラスクを見返す。読書中のセリオスは、ゆっくりと顔を上げてラスクをちらりと見遣ると、そのまま視線を本に戻した。何事かを討論している様子のカイルとサンダースは、それを中断して、「何事?」と言う表情で見つめていたが、タイガが動いた様子を察すると、中断していたそれを再開していた。

「ラスク、物にあ……」
 注意しようとしたユリの声を遮るように、タイガが声をかけた。
「ちょっと、表出とこか」
「タイガ」
「心配すんな。ちぃっとばかし、ガス抜きするだけやから」


 自分たちの教室の入り口に近い場所に、ラスクとタイガの姿があった。ラスクは、壁にもたれるようにしているが、対するタイガの方は、その服装のままと言うべきか、アカデミーの生徒らしくないと言うべきか、お世辞にも行儀が良いとは言えない格好でしゃがみ込んでいる。
「なぁ、ラスク」
「なに?」
「なんか気に入らんことでもあったんか?」
「結果を出せないこと……」
 ラスクの口から出た言葉に、その察しの良さをタイガは確かに感じ取った。
「今回の結果は?」
「予選第二セット敗退、ゴールドメダル」
「予選敗退は、それで何回目や?」
「多分……9回目」
「充分結果出せとるやないけ」
 一刀両断するようなタイガの言葉に、ラスクはかちんと来た。
「そ、そんな言い方しなくても、……い、痛い、痛い」
 言葉が遮られたのは、ラスクの頬をタイガがつねり上げたからだ。
「ユリが、お前さんと同じ階級やったときは、予選敗退18回。雷貰わずに済んだのは9回。メダルに届きもせんかったのが、3回。それでも、ユリは落ち込んだり、当たり散らすようなとこは見せてないぞ」
 とラスクに言っておきながら、タイガはこうも付け加えた。
「ま、俺らの見えへんとこで暴れとるかも知れへんけどな」
 人なつっこい笑顔を浮かべることもできるのに、と、思いたくなる笑顔をタイガが浮かべた。
「そうだけど……」
「お前に当たってしもうた、俺に言えた義理やないかも知れへんけど」
 と言ったところでタイガが言葉を切った。まるで、続けるべき言葉を探しているかのような態度で。が、凝った言葉を探すのではなく、簡単な言葉を選ぶことにしたのか、それほど間をおかずに、続く言葉が出てきた。
「もうちょっと、大人になれへんか?」
「お説教?」
「いや、そんなもんやない。ただ、お前さんは、人目に付きとうないことに関しては、ちゃんとそう言う風にできるところあるやろ?」
「まるで見てきたようなこと言うんだね」
「あぁ…… 一回だけ、お前らがキスしとるとこ、見てしもうたことあるからな」
「見て、たんだ」
 タイガの口から出た言葉で、ほんの少し前に、彼にとげとげしい言葉をぶつけられた意味を理解したラスクが、愁傷な態度を見せた。
「とっちゃった、こ……いひゃいいひゃいいひゃい!」
「その件に関しては、もう終わりにしたはずや」
 が、タイガが、ラスクの言葉を完成させまいとして、再び頬をつねったのだ。
「お前は気にせんでええんや。俺みたいな、負け犬のことはな」
「ほっぺた、つねんなくても良いじゃないか」
 とラスクはむくれていたが、タイガは、そんな様子など何処吹く風と、聞き流したような言葉を投げ返していた。
「天賦の才、っちゅうヤツなんやろな。お前さんのは。にしたところで、人であることにかわりはない。嬉しいときもあれば、辛いときもあるはずや。一人でどうこうするつもりなら、人前でさらすな。一人でどうにもできひんのやったら、素直に誰か頼れや」
「タイガさんとか?」
「あほ。俺の手に余るわ」
 撥ね除けるようなタイガの言葉に、言わんとしていることを理解したのか、ラスクの表情が曇る。
「でも……今のままじゃ……」
「俺はな、ラスク。お前の気の持ちようやと思うてる。頼らんことも強さの現れなら、頼ろうとすることも、強さの現れってな」
「そんなこと言われても、よく判んないよ」
「いずれ、判る時期が来るわ」
 タイガは、ラスクにそう応えて立ち上がると、緑の髪をくしゃくしゃと乱しながらなで回した。

To be continued...->『幕間#1・時間的空隙』

これで、ワンクッション有って……ウボァ orz
結局ストック、できんかったし……筆が進まないのも、問題ですな。

いや、BGMをメタルブラック以外のにしているのが、最大の影響なんだけどね。
あれだと書けるのよ。この話。多分……そんな重たい話にはならないはず。かといって……軽くも無さそうね(笑)。

……しかし、まだ表に出せない設定のことを考慮すると、「俺は、こう解釈した」っていうことなんだよな。やりたい放題にしてるけど。