#17・『幕間#2・昨夜聞かされた話』#5

美乃梨:
 ……一つ訊いて良いかな?
ふゆざき:
 ん?
美乃梨:
 動き出せば早いくせにさ? なんで動き出さないの?
ふゆざき:
 興が乗らない日もあるの。困ったことに。
美乃梨:
 そのムラッ気、もう少しなんとかしたら?
ふゆざき:
 かもしんね……

この話の先頭は、5/1。その次のブロックは、5/10から。で、幕間#2は、5/18から。では、本文。

幕間#2・昨夜聞かされた話#5

<-『幕間#2・昨夜聞かされた話#4』

「え? ちょっと、待って……」
 自身にも理解しやすくするためだったのか、それとも、敢えて直接的な表現を使ったのか。彼女たちのクラスの中でも、ラスクと同じように飛び級で入学を果たしたアロエの言葉に、ユリは動揺していた。
「ラスク、そんなこと……何も、言ってないし、そんな素振り、見せてもないよ?」
「見せまいとしているのでしょう」
「ふさぎ込んでたの、ホームシックか、何かだと思ってたのに……」
「ショックだったのでしょう…… お二人の身に降りかかった災難までは、私には判りません。お父様も、その事には触れたがりませんでしたから」
 うわごとのようなユリの言葉に、平静なままでシャロンが言葉を返す。噛み合っているようで、噛み合わない二人のやりとりに、ルキアが質問を投げ込んだ。
「それじゃ、二人は、どうやって今まで?」
「お父様が、預かっていた二人を引き取ったからです」
 まるで、準備していたかのような早さで、シャロンが答える。
「預かる?」
「ええ。お二人とも、フィールドワークを主としながらも、可能な限りクリスたちも同行させていたのですが、危険な場所に研さんに赴かれるときは、お父様のところに、二人を預けていくことが多かったのです」
「サラブレッドかと思ったら、ラスクも結構苦労してたんだ」
「お父様も、昔のよしみとのことで、快く引き受けていましたし、クリスたちも、実の両親のようにお父様たちに懐いても居ましたから、これと言って問題はなかったのですが……」
「が?」
「お二人が客死なされたとの報せが届いた後、二人の処遇について、クリスにも次第を打ち明け」
 おとなしく相槌を打っていたルキアが、シャロンの言葉に素早く反応した。
「ちょっとまって。それじゃ……なに? クリスは知っていたって言うの?」
 軽く裏返ったルキアの声に、シャロンは頷いてから答えた。
「ラスクに悟られまい、って判断は……彼女の判断です。その判断を尊重して、お父様も、二人を養子として迎え入れるのではなく、後見人となって、二人が成人と認められるまで、生活を保障することしたのです」
「でも、そうするとさ……クリスが、シャロンのことを『シャロンお嬢様』と呼ぶ必要なんて無いじゃないの?」
 シャロンの言葉が完成するのを待って、ルキアが当たり前の質問を投げかける。
「シャロンのお父さんが後見人だとすると、立場的には対等のはずだよね? シャロンの言い分じゃ、分け隔て無く、って感じだし。それに、」
 思い出す素振りを見せて、ルキアが確認の意味で問いかける。
「ラスクは、シャロンのことを、『シャロン姉』って呼んでるわけだしさ?」
「お父様の仕事を学んでおきたい、と彼女から言い出したからですわ」
 クリスの呼び方が、自分の意に沿わないものだと言いたげに、溜息をついて、シャロンが言葉を続けた。
「私から見れば、クリスも、ラスクと同じように妹に当たる存在。ラスクと同じように呼んでくれても構わないのですが」
「本人がそれを良しとしない?」
 待っていたようなクララの言葉に、悲しそうに微笑んで、シャロンが言葉を補った。
「根が真面目で、融通が利かなくて」
「まぁ、クリスが、シャロンのことをお嬢様と呼んでいる理由は判ったけど……さ。だったら、シャロン。どうして、あなたまで、家を出て、寮生活を選んだの?」
 シャロンの選択を理解できない、そう言いたげにルキアが問いかけた。

To be continued... -> 『幕間#2・昨夜聞かされた話#6』

利用できる公式設定は、がしがし利用していきますよ? 利用できないのは、無視するだけ(マテ
しかし、何というかなぁ……
我ながら、えげつない設定してるとは思う。うん……
そう言えば、結局分量は、前と変わんなかったね。ちょっと増えた程度でさ。