土日も読みたいって人が居るのが判った。ので、そのまま上げることにしたけど、そんな大きな山場はないと思うよ? 石は投げ込んだけどさ。(ぉぃぉぃ
では、いつもの。
大まかなおさらいは、00年02月01日に。話の頭自体は、今年の5月1日から。このブロックの先頭は、7月12日から。
貴女(ユリ)じゃなきゃ#3
<-『貴女(ユリ)じゃなきゃ#2』 ラスクの手を引くように、体操服姿のユリが購買部に姿を現したことで、クリスは意外な物を見たような気になった。 「あ、ユリさん。それに、ラスクも。どうしたんです? そんな格好で」 「予備の制服を頼もうと思ったんだけどさ、いいかな?」 「どっちにします? 総合モデル? それとも、魔闘モデル?」 「そんなの聞くまでもないじゃない。動きやすい方に決まってるわ」 クリスの確認に、ユリは、そんなこと聞くな、と言いたげな口調で応える。 「それじゃ、採寸した方が良いかもしれませんね」 「えー? サイズはかるの?」 「そんなことする必要ないでしょ?」と抗議の声をユリが上げるが、 「お互い成長期なんですから、キツくなったところはないか、とか、体形が変わったところはないか、とか確認しないと」 と、真っ向から抗議を無力化するような反論をクリスが投げ返す。が、成長が止まってますか? と聞き返すような言葉が、その反論に続いた。 「でも、そう言うのがないのなら、無理にとは言いませんよ」 ユリ自身としては、特に体形が変わったような気はしていない――大食漢キャラとの印象がついて回ってはいるが、彼女の場合、その食べた分動くことで消費しているので、結局収支がトントンになっているのだ――ので、採寸する必要がないように感じていた。が、昨日以来まとわりついて離れない『何か』をはっきりさせるためには、彼女と話し合うことが必要な気分になっていた。 「お願いしよう、かな」 即断即決を絵に描いたような彼女が、珍しく逡巡したので、クリスとしては、気遣う方が良いような気になった。 「ラスクの方から、採寸しますね」 突然の指名に、ラスクは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をするのが精一杯だった。それに続いたのがユリの反問。 「なんで?」 「それは、ひ・み・つです」 ユリの問いかけを煙に巻くような態度で、クリスは答える。 「それじゃ、ラスク。こっちにおいで」 「なんだか、よく判んないけど……」 「ちょっと、ラスク、借りますね」 「姉さん!」 「私たちは、席を外しますから……いろいろと整理つけておいてくださいね」 人をもの扱いしないで、と続いたラスクの抗議を聞き流して、クリスは、ユリにそう告げて、採寸のための部屋にラスクを伴って入っていった。 「ねぇ、ラスク?」 と、クリスが呼びかける。声の様子からは、片手間、との印象は感じられないのだが、その手際を見ていると、どうしても片手間としか見えない。 「何、姉さん」 「ラスクは、どうしてユリさんを選んだの?」 何気ない問いかけだったが、ラスクにしてみれば、即答しかねる質問でもあった。 「そ、そんなこと、姉さんに応える必要ないじゃないか」 「私は、何があっても、ラスクの最後の味方のつもりだったんだけどな」 ようやく出せた、とは言え、反抗的なラスクの言葉に、傷ついた素振りを見せてクリスが言葉を投げ返し、 「でも、隠そうとするところは、成長の証なのかな」 ダメを押す。と、クリスのだめ押しに、ラスクも態度を軟化させたのか、 「……笑わない?」 とポツリとつぶやいた。静かなラスクの言葉に、採寸の手を止めて、クリスが聞き返した。 「何を?」 「選んだ理由……」 「言い切れないけど、努力はするよ」 「先生以外で、初めて『凄い』って言ってくれたのが、ユリとタイガさんだったんだ」 俯いて応えた弟に、微笑みを浮かべて、溜息を一つつくと、 「それだけ?」 と優しく問いかけた。心当たりがあるからなのか、真っ赤になって俯きながら「それだけだよ」とラスクが応えた。 「無理に理由を応える必要ないのに」 「え?」 「理由が無くても良いじゃない。褒められたのが嬉しくて、なんだか判んないけど、好きになってた。それだけで」 「聞かれたら、答えを準備しなきゃいけない、って訳じゃないんだから」 To be continued... -> 『貴女(ユリ)じゃなきゃ#4』