#44・『貴女(ユリ)じゃなきゃ』#3

土日も読みたいって人が居るのが判った。ので、そのまま上げることにしたけど、そんな大きな山場はないと思うよ? 石は投げ込んだけどさ。(ぉぃぉぃ

では、いつもの。
大まかなおさらいは、00年02月01日に。話の頭自体は、今年の5月1日から。このブロックの先頭は、7月12日から。

貴女(ユリ)じゃなきゃ#3

<-『貴女(ユリ)じゃなきゃ#2』

 ラスクの手を引くように、体操服姿のユリが購買部に姿を現したことで、クリスは意外な物を見たような気になった。
「あ、ユリさん。それに、ラスクも。どうしたんです? そんな格好で」
「予備の制服を頼もうと思ったんだけどさ、いいかな?」
「どっちにします? 総合モデル? それとも、魔闘モデル?」
「そんなの聞くまでもないじゃない。動きやすい方に決まってるわ」
 クリスの確認に、ユリは、そんなこと聞くな、と言いたげな口調で応える。
「それじゃ、採寸した方が良いかもしれませんね」
「えー? サイズはかるの?」
 「そんなことする必要ないでしょ?」と抗議の声をユリが上げるが、
「お互い成長期なんですから、キツくなったところはないか、とか、体形が変わったところはないか、とか確認しないと」
 と、真っ向から抗議を無力化するような反論をクリスが投げ返す。が、成長が止まってますか? と聞き返すような言葉が、その反論に続いた。
「でも、そう言うのがないのなら、無理にとは言いませんよ」
 ユリ自身としては、特に体形が変わったような気はしていない――大食漢キャラとの印象がついて回ってはいるが、彼女の場合、その食べた分動くことで消費しているので、結局収支がトントンになっているのだ――ので、採寸する必要がないように感じていた。が、昨日以来まとわりついて離れない『何か』をはっきりさせるためには、彼女と話し合うことが必要な気分になっていた。
「お願いしよう、かな」
 即断即決を絵に描いたような彼女が、珍しく逡巡したので、クリスとしては、気遣う方が良いような気になった。
「ラスクの方から、採寸しますね」
 突然の指名に、ラスクは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をするのが精一杯だった。それに続いたのがユリの反問。
「なんで?」
「それは、ひ・み・つです」
 ユリの問いかけを煙に巻くような態度で、クリスは答える。
「それじゃ、ラスク。こっちにおいで」
「なんだか、よく判んないけど……」
「ちょっと、ラスク、借りますね」
「姉さん!」
「私たちは、席を外しますから……いろいろと整理つけておいてくださいね」
 人をもの扱いしないで、と続いたラスクの抗議を聞き流して、クリスは、ユリにそう告げて、採寸のための部屋にラスクを伴って入っていった。

「ねぇ、ラスク?」
 と、クリスが呼びかける。声の様子からは、片手間、との印象は感じられないのだが、その手際を見ていると、どうしても片手間としか見えない。
「何、姉さん」
「ラスクは、どうしてユリさんを選んだの?」
 何気ない問いかけだったが、ラスクにしてみれば、即答しかねる質問でもあった。
「そ、そんなこと、姉さんに応える必要ないじゃないか」
「私は、何があっても、ラスクの最後の味方のつもりだったんだけどな」
 ようやく出せた、とは言え、反抗的なラスクの言葉に、傷ついた素振りを見せてクリスが言葉を投げ返し、
「でも、隠そうとするところは、成長の証なのかな」
 ダメを押す。と、クリスのだめ押しに、ラスクも態度を軟化させたのか、
「……笑わない?」
 とポツリとつぶやいた。静かなラスクの言葉に、採寸の手を止めて、クリスが聞き返した。
「何を?」
「選んだ理由……」
「言い切れないけど、努力はするよ」
「先生以外で、初めて『凄い』って言ってくれたのが、ユリとタイガさんだったんだ」
 俯いて応えた弟に、微笑みを浮かべて、溜息を一つつくと、
「それだけ?」
 と優しく問いかけた。心当たりがあるからなのか、真っ赤になって俯きながら「それだけだよ」とラスクが応えた。
「無理に理由を応える必要ないのに」
「え?」
「理由が無くても良いじゃない。褒められたのが嬉しくて、なんだか判んないけど、好きになってた。それだけで」

「聞かれたら、答えを準備しなきゃいけない、って訳じゃないんだから」

To be continued... -> 『貴女(ユリ)じゃなきゃ#4』

今日のあとがき(ダベリとも言う)

まさか、そんな誤解をしてる人は居ないと思うけど……
昨日、着替えを済ませて出かけようとしたユリが、ブルマとかスパッツとかをはいてないって誤解した人、居ないよね?
直接は書いてないけど、普段から、スカートの中に、そう言うのをはいてる、って話にはしてあったはず。「sneg?」のver.1でも、クリスとの間で、そういうやりとりをさせてたから、判ってるだろうとは思うけど。

さて……今日は分量多め…… 本当に……もう、なんて言うか。明日は、標準的な分量になります。はい。