#42・『貴女(ユリ)じゃなきゃ』#1

今回の話を書き進めるに当たって、一番悩んだのが、この締めの部分。
ここにキスシーン持ってくるとさ、なんか、えちぃ感じになっちゃうからさ、どないすっかなぁ、ってね。どんな答えを俺が出したのかは、読んで判断してもらうとしましょうか。

ラストブロック始める前に、いつもの。
大まかなおさらいは、00年02月01日に。話の頭自体は、今年の5月1日から。

2ヶ月半に渡るダベリに付き合ってくれた方々に、挫けそうになった俺を助けてくれた人達に、感謝を込めて。
ラストブロック。本日より開演にございます。

貴女(ユリ)じゃなきゃ#1

<-『幕間#4・老師の導き』

 自分の言葉を引き金にして泣きじゃくっていたラスクの頭の動きが小さくなったことで、落ち着き始めたことをユリは感じ取った。
「気は、すんだ?」
 静かな言葉で、ラスクに問いかけると、それに応えるように、涙や鼻水でぐしゃぐしゃになった顔を上げた。
「酷い顔になっちゃったね」
 ラスクの様子を見て、思わず口をついて出た言葉に、ユリはどのような表情を乗せればいいのか、躊躇ってしまった。が、同時に、今の彼に、「それ」を問いかけるのが酷にも感じた。
「ごめんなさい……」
 ユリが作ってしまった間の意味を理解したからなのか、理解できなかったからなのか、ラスクが謝罪の言葉を投げかける。
「え?」
 予想外と言えば予想外なラスクの返答に、ユリはきょとんとした返答しか返せなかった。
「制服、汚しちゃって……」
 自分の謝罪の意味が通っていないと判断したのだろう。ラスクが、謝った理由をポツリと言葉にした。その言葉に従って、彼に貸していた胸の部分を見ると、ラスクの言葉通り、彼の涙が作った染みが出来ていた。
 涙の染みが、なんとなく愛おしく感じ、ユリとしてはこのまま着ていたい気分になる。だからなのだろうか、そんな言葉が出てしまったのは。
「いっそのこと、しばらく休んじゃおっか?」
「そ、そんなことしたら、誤解されちゃうよ!」
 ユリの言葉に、真っ赤になったラスクが、素っ頓狂な調子で、抗議の声を上げる。ユリとしては、多少の誤解など、かまうところではないのだが、そう答えると、ますますラスクの抗議を招きそうなので、穏便な言葉で済ませることにした。
「冗談よ、冗談。でも、替えが一つ減っちゃうから、新しいの頼まなきゃね」
「え?」
「だって、ラスクが泣いたからできた染みなんだもん。取っときたい気分になったし、このまま着ていたいのもあるけど……この格好だと、確かにいろいろ誤解招きそうだよね」
 とラスクに答えて、ぼやくように付け加えた。
「ルキアやタイガに見つかったら……どんな有ること無いこと言いふらされるか」
「って事は、購買、行くの?」
 ラスクが、確認の意味で問いかける。
「行かないでどうするの?」
 と、答えつつユリが着替え始めようとする。それを目の当たりにしたラスクが、
「僕がいること忘れないでよ!」
 と抗議しながら在らぬ方に目をやったのをみて、良いじゃない、と言いかけたユリだったが、今日がラスクにとって『特別』な日であったことを思い出し、申し訳なさそうに答えた。
「ごめん。今日は、ラスクの言うとおりにする」
「え?」
 予想外なユリの返答に、驚いたのはラスクの方だった。
「あの、その、そ、そういう意味じゃなくて」
 普段とは正反対の反応を示したユリに、自分が嫌ったか、嫌われたか、のどっちかのような印象を拾ってしまい、誤解を解こうとあたふたとしてしまっている。
「今日だけだよーだ」
 気分を害したような素振りを見せずに、自分に抱きついてきたユリに、ラスクはちょっとした心配が、取り越し苦労だと思うことにした。

To be continued... -> 『貴女(ユリ)じゃなきゃ#2』

今日のあとがき(ダベリとも言う)

ちょっとした石を投げてみた。二人に。
まぁ、この投げ込んだ石に関しては、伏線めいたモノを忍ばせておいてあったから、人によっては、「こう来たか」と思うかも知れないけどさ。

でも、この二人の物語が、軟着陸することは、(この物語から見て)未来が暗示してるから、問題ないよね。