#14・『魔(大いなる力)を導く士(もの)として』#5

続く話に、一切関係ないんだけどさ、
立ちくらみが起こった瞬間ってさ、なんか、気持ち良くね?

美乃梨:
 ……そういう考え方をする時点で、半ば危険人物だと思うんだけど。
ふゆざき:
 仕方ないじゃんよー。二十年来のつき合いな症状なんだからさ。
美乃梨:
 ……体質改善しようとかって思わないの?
ふゆざき:orz
 効果の出る改善策を採れてたら、もうとっくに解放されてると思う。
美乃梨:
 ……それもそうね。

さてさて、どうしようもない三文芝居の後は、コピペに続いて、今日の本文に。
大まかなおさらいは、00年02月02日。で、話の頭は、8/7。このパートの始まりは、8/18、つまり、この前の金曜日。

魔(大いなる力)を導く士(もの)として#5

<-『魔(大いなる力)を導く士(もの)として#4』

 創立されてから、相当な時間が経過しているのか、それとも、それだけ、『謎』と言うものとの闘いが熾烈であるのか。その称号を授かっていない彼女たちには、判らない。が、その称号を授かった、相当数の人材が喪われてしまったことだけは、刻まれた名前の数から推し量ることができた。
「マイケル・エンライトン、ルーシア・エンライトン……」
 そう刻まれている名前を彼女の指がなぞる。
 幼子二人を遺して、刻まれる名と化す……
 その無念さを想像することはできない。自分にとっての特別な少年は、半歩だけとはいえ、後ろにいることに変わりはないし、共に歩いてきた少年など、未だに小人の意匠の徽章をつけている。彼女の周辺が、そのような状態であるだけでなく、彼女自身、碑に名前を刻まれる資格を、有していないのだ。そんな彼女に、遺すことの心残りを、理解・想像しろと言うのは、少々酷な話ではあった。
 ただ、遺される側が、どれほど辛いのか。それは、彼女にとって特別な少年が、教えてくれた。
「ラスクは仕方ないとしても……タイガには、もう少しがんばってもらわないと……」
 と溜息が漏れる。
「って、そんなこと言いに来たんじゃなかった」
 と、軽く頬を叩いて、気合いを入れ直すと改めて碑と向き合った。
「マイケルさん、ルーシアさん。初めまして。ユリと言います。いきなり、関係のない私が、ここに来たので驚かれているかも知れませんが、お二人の……子息、でいいのかな? 子息のラスク君と付き合っている者です。今日は、ちょっと報告しておきたいことがあって、ここに来ました」
 と告げたところで、ユリは一回口を閉ざした。何を告げるべきで、何を伏せるべきか、その整理をしていたのだ。無論、報告する相手は、生きている人物、と言うわけではないので、何を報告しても無駄かも知れないし、逆に、草葉の陰から見守っていたのなら、何を伏せても無駄になるだろう。が、ユリは、差し支えない程度の報告に取りかかった。
「今のラスクは、出逢った頃よりも、不安定になってます…… 私たちから見れば、大したことのないつまずきなんですけど、彼にとっては……ものすごくショックだったようで。しばらくは、立ち直る以前の問題だったんですが、ようやくトーナメントに参加できるぐらいには立ち直れたようで、今、上級六級、魔導号を授かるための道のりの半分を歩き終えようとしているところです。」
 と、言い終えたところで、ユリの表情が曇った。『ラスクの今』を告げる必要があるのかどうか、躊躇ってしまったからだ。それも、数瞬のこと。決意混じりの溜息をつくと、隠すことなく『ラスクの今』を彼女は言葉にすることにした。
「立ち直りつつあるんですけど、まだ、『大魔導士』って言葉に抵抗が有るみたいで、私が昇格したときでも、『大魔導士』とは呼んでくれませんでした。それでも、前に進もうという意欲を、取り戻しつつあるので、安心してください」
 伝え終えたところで、ユリの言葉が止まる。風が渡り、巣立ち始めただろう若鳥たちの囀りが、耳に入ってくる。
 伝えることを伝えきったのか、決心したことを表すように、一息吐くと、締めくくりの言葉を口にした。
「私が言いたかったのは、これぐらいです。取り敢えず、ラスクには、魔導士号を授かっている彼女が居るんだ、って事をお伝えしたくて、ここに来ました。次、私が来るのは……多分、マイケルさんたちと同じ称号を授かったときになると思います。けど……次は、ラスクと一緒に来ますね。だから、それまで、私のこと、忘れないでください」
 恭しく一礼すると、ユリは踵を返して、ラスクが去っていった方向に歩き始めた。

To be continued... -> 『魔(大いなる力)を導く士(もの)として#6』

ダベリ

えーっと、前作『境界線』を読んでたら判ると思いますが、あっちでは、師であるロマノフ翁が呼びかけたために、ファーストネームだけとなってましたが、今回は、フルネームってことで。
だとすると、ラスクは、どうしてファミリーネームを知られることを憚ったのかと言えば、非賢者である間は、名乗ることを禁止されるためにござります。ので、作中時点においては、あと二回。プレイ内容に伴って進む時計に合わせれば、あと一回、昇格するまでは、ラスクは、そのファミリーネームを、おおっぴらに名乗ることができない状況にあるわけでござります。
一応、シャロンにも、パーシュートというファミリーネームは設定してありますけど……メインに据えることがないから、使う機会が無いのですな。(酷いな、ぉぃ
さてと、明日でこのパートは終了。土曜日に、この話自体の締めくくり、と相成っております。
忙しないタイミングでの物語の投下と相成りましたが、今回もお付き合いいただき、恐悦至極に存じます。

次は、ラスクの魔導昇格話書かなきゃならんじゃんよ……どないすべ?